「ラティカ様、とってもお綺麗です……」
傍らでマチが目を潤ませている。
「ありがとう、マチ」
にっこりと微笑み、マチの浮かんでいる涙をすくってやる。
今、私はボスディア家庭園のテラスにいる。
どこを見ても素敵なバラ。
エデンの園で純白のドレスに身を包み、愛しい人を待っている。
「ラティカ、準備はできた?」
ロザンヌが上品な藤のスーツに身を包み、バラのアーチから姿を現した。
「ええ、大丈夫よ」
「ラティカ、おめでとう……。色んなことがあったけれど、今が一番幸せに笑えてるね」
ロザンヌの言葉に不意をくらい、涙がこぼれる。
「ちょ! ラティカ、なに式の前に泣いてんのよ!?」
ぽろぽろとこぼれる涙にロザンヌが慌てふためく。
その姿があまりに滑稽で、つい噴き出してしまった。
「ラティカぁーっ!」
泣き出したと思えば、笑い出した私にロザンヌもつられて笑い出す。
「こちらは明るいな」
アーチの奥から聞こえた。
笑い声が止み、そちらへと視線が移動する。
漆黒のタキシードに身を包んだ愛しい人がそこに立っていた。
「ケイシュ様……」
愛しい人を視線に捕らえただけで涙があふれてくる。
ただ、静かに涙があふれ、心に光が満ちてくる。
「ラティカ……」
再び突然泣き出した私にケイシュ様は目を細め、近づいてきた。
耳元でそっとささやいた。
「ラティカ、迎えに来たよ……」
「お待ちしておりました……ケイシュ様」
「様はもういらないよ。俺たちは夫婦になるのだから」
「はい……ケイシュ」
私たちは共に手を取り、式会場となっているエデンの園中央部――私たちが初めて出逢った場所へと向かう。
ケイシュ……一緒に幸せになろうね。
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