Double Moonで贈るLovers5のお題
03.逸らされた瞳

| 前へ | 次へ | 目次


 悟になでなでされがら、ふと以前友人に言われた言葉を思い出した。
『ねぇ、望。そんだけ付き合ってて何にもないの?』
 何にもないの、って聞かれたって困るよねぇ。
『てか、何にもないなんてありえなくない?』
 周りで聞いていた友人たちもその言葉に同意していた。ただ、真麻ちゃんだけは困惑気味な顔で苦笑してたけど。
 いつの間にか私は自分の中へとトリップしていた。
「……のぞみ?」
 なでなでしていた手はいつの間にか止まっていて、覗き込むように見つめられていた。
「どうした……?」
「前、友達に聞かれた言葉を思い出してたの」
「聞かれた言葉?」
「うん、それだけ付き合ってて何にもないの、って」
「また何てこと言い出すんだ……」
 悟は眉間にしわ寄せて、遠くの方へと目線を移した。
「でしょ! なんて答えたらいいかな、って黙ってたら……」
「……黙ってたら?」
「何もないなんてありえない、なんて言い出すんだよ?」
「ま、まぁ。それも一理あるな」
 悟は困ったように苦笑する。
「悟までそれを言う?」
 今度は私が覗き込むように悟を見つめた。


| 前へ | 次へ | 目次

Copyright(c) 2008 花は立つ. all rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-