Double Moon
16.血、血が……!!

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 後ろでテントが消えるのがわかった。
 ちらりと目の端でライの安全を確認する。
 結界方陣の中か。
「なら、安全だ」
 この際、婆さんたちはどうなってもいい。
 ライが安全なら、それでいい。


 ひとり、またひとりと沈めていく。
 額に汗が浮き上がる。
 だが、相手は待ってはくれない。
 汗をぬぐうことなく、またひとり地面に沈めた。
 そのとき、ライのいた辺りから膨大な魔力の噴出を感じ取った。
 次の瞬間。


 ずぷっ……
 そろそろと後ろを振り返る。
 羽根が舞う。
 草原で見た夢の姿のライが、いた。
 俺と背中合わせになるように、そこに、いた。
 ライがこちらに顔を向ける。
「変な、顔」
 ライは微笑みを湛え、倒れこんできた。
 俺は慌ててそれを支える。
「ライっ……!!」
 搾り出すように、漸く声が出た。
「おいっ! お前、なんでここにっ!?」
 向こうから婆さんたちが駆けてくるのが聞こえる。
 ライの頬に手を添える。
 ライが何かを伝えようと、懸命に口を開ける。
「だ……じょぶ……」
「そんな姿してなにが大丈夫なんだよっ!!」
 ライの後を追うように、ライの背から抜けた羽根が空から舞い落ちる。
 ライはそれを見届けるようにゆっくりとまぶたを閉じた。
「ライ……? う、うそだろ? おいっ!」
 今起こったことが信じられなくて、ライを力いっぱい揺する。
「ジュグ! お嬢さんは儂らに任せて、自分の仕事をやれっ!」
 婆さんたちが追いつき、叱咤を飛ばす。
 俺はその言葉に従い、ライをそっと横たわらせ、ゆっくりと立ち上がる。
 最初の獲物は、ライを刺した奴。
 握っていたソードが俺の魔力を浴びて、マジックソードへと変貌する。
 男に向き直る。
「お前が、最初の犠牲者、だ」
 剣先をそいつに合わせ、一気に振り落とす。
 剣先から雷の筋が現れ、男を跡形もなく消し去った。
「さて、次はどいつだ?」
 無意識に口が笑みをかたどる。
「俺を怒らせたこと、後悔するがいい」


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