Double Moon
13.魔法の言葉

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 ジュグに叩き起こされ、慌てて広場に行くと、すでに宴は盛り上がっていた。
 ちょっと、主役いないのにこんなに盛り上がってるってどーなのよ?
 あ、お婆さんはっけーん。
「おや、お嬢さん。ぐっすり眠っていたねぇ」
「気づいてたのなら、起こしてくださいよー」
「あら、とても気持ちよさそうだったわよ?」
 わ、お姉さんまで。
「ささ、たんとお食べ。お嬢さんのために用意したのに、肝心の主役が食べなけりゃ意味ないじゃろ」
 お婆さんはそう言い、私の前に料理を移動させてくる。
 お姉さんもそれを手伝って、いろんな種類の飲み物を移動させてきた。
「わぁいっ。いっただっきまーす!」
 手当たり次第に料理を口に運ぶ。
「んーっ、おいしぃー!」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。この料理、私が作ったものだしね」
「えっ!? これ、全部!?」
「もちろん」
「うわー、お姉さんすごすぎ! いやぁ、天下取れるよっ!」
 自分でもよくわかんない感嘆の言葉を並べながら、料理を口に運んでいく。


「くはーっ! 食べた食べたっ」
 至極満足、といった風におなかを打つ。
「いやぁ、見事な食べっぷりだったのぉ」
 お婆さんも満足、といった感じに溜息をつく。
 お姉さんもそれに頷く。
「さて、お嬢さん」
 お婆さんが本題だ、と言わんばかりの口調で切り出した。
「なんでしょう?」
「お前さんのこちらに来た理由、本当はわかってるんじゃないのかい?」
 この人も読心術持ってるのか……?
「まぁ、わかってはいても、心の整理はなかなかつきませんよ」
 どうしても苦笑が伴ってしまう。
「そうじゃろなぁ……」
 私はジュグに会いたかったからこっちに来た。
 そして、無事会うことが出来た。
 さぁ、それでどうなるの?
 私の今の気持ち、これを優先させたら、私は本当に、あっちの世界に戻れなくなってしまう。
 それだけは、駄目、らしいからね。
 ふぅ、と一息。
「私、ジュグのこと、好きになっちゃったのかな……」
 ぽつりとこぼした本音。
「ま、それも良いじゃろ。どうするかはお嬢さんが決めることじゃ。それに、このままジュグとおってもなんにも変わらんじゃろ」
「……うん」
「それに、お前さんはあと1回しか移動できんからの」
「え?」
「ジュグから聞いたが、お前さん、魂魄で一度こちらに来ておるじゃろ。こちらとお前さんの世界を行き来できるのは、4回限りと決まっておるからのぉ」
 決まっておるからのぉって、そんなのん気な。
 って、ことは……。
「次の別れが最後の別れ……」


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