「今日の、ミッション?」
なんだかラヴィスの言った言葉が気になった。
「あぁ。ジュグ、俺と組まないか?」
「組むもなにも、昔からのパートナーじゃねぇか」
言葉の端になんだか嫌な気を感じ、語尾が震える。
「そうじゃない。あの子を見捨てて俺のところに来いよ」
「!!」
「あの子といたって、お前に利益があるとは到底思えない。なら、俺と組んで、本部の連中にさっさと渡しちまった方が充分に利益はあるぞ」
ラヴィスの言葉を俺は理解できなかった。
いや、理解することを拒んでいた。
ライを見捨てて連中に寝返れ、だと!?
今までに本部の連中に連れて行かれた異世界からの客人は数え切れないほど見てきた。
それに、連れて行かれた客人がその後どういうことに使われているのかも知っている。
だからこそ、俺はライを手放したくない。
ライだけはあいつらのモルモットにしたくないっ!
確かに、ここでライをあいつらに渡したら、死ぬまで遊んで暮らせるだけの謝礼はもらえる。
だが、それだけだ。
その後にはライは、いないんだ。
そこまで行き当たり、気づいてしまった。
「ラヴィス……無理だ」
「ジュグ?」
ラヴィスが疑念のこもった目で俺を見つめる。
「無理、なんだ。いまさら気づいちまった。俺には、ライが必要だ」
「お前……」
「よかったよ、失う前に気づくことが出来て」
「あの子は異世界の住人なんだぞ!? 到底叶わない想いなんだぞ!?」
ラヴィスが勢いよく言いくるめる。
「わかってる」
そう、わかってるさ……。
でも……。
「止められないんだ」
ラヴィスの双眸を見つめながら、言った。
俺の眼から何かを感じ取ったのだろう。
ラヴィスはふっと笑い、俯いた。
「本気、なんだな?」
「あぁ」
「後悔、しないな?」
「当たり前だ」
「なら……」
「「俺とお前は今から敵だ」」
見事にハモった。
そして、ふたりで最後に笑いあった。
きっとこれが、最後。
「じゃあ、ジュグ」
「おう」
「またな」
ラヴィスはその言葉を残し、本部へと戻っていった。
俺はその後姿を見つめながら、酒瓶の中の液体をのどへと流し込んだ。
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