夜になり、準備もなんとか間に合って宴が始まった。
ふと周りを見ると、ライの姿がない。
あのヤロ、どこに行きやがったんだ?
「あのお嬢さんなら、聖樹のところにおるぞ」
……迎えに行けってか。
ったく、婆さんも意地悪になったもんだ。
居場所がわかってんのなら、自分で行けばいいものを。
「お前さんが行かねば意味がないじゃろうが」
……このババアも読心術持ってやがんのか。
「へいへい。迎えに行ってくるさ」
ふぅと溜息をつき、山積みにされている酒瓶を一つ拝借し、ライがいるらしい聖樹のもとへ向かった。
婆さんの言ったとおり、ライは聖樹の下で爆睡してやがった。
相手がヤローならここでひと蹴りでもして叩き起こしてるとこだが、相手は女だ。
優しいジュグさまとしては、揺すって起こすということしかできない。
まぁ、多少乱暴に、だがな。
「おい、起きろ」
「ん……あと30ぷん……」
「あと30分じゃねーっ。起きやがれっ」
揺すること10分。
漸く覚醒してきやがった。
「あれぇ? ジュグ、こんなところでなにしてんのぉ?」
「寝ぼけてんじゃねぇぞ。宴が始まってるから起こしに来てやったんだろうが」
ライは宴という言葉に反応して完全に目を覚ました。
ゲンキンなヤツめ……。
「えっ、宴もう始まってんの!? もう! もっと前に起こしてよぉー。ってなに1人だけ自分の飲み物確保してんのよっ」
なんてブツクサ言いながら、宴が行われている広場の方に駆けていった。
「おー、はえーなぁ」
「そんなのんきに言ってる場合じゃないだろう」
後ろから声がした。
「お、ラヴィスじゃねぇか。本部にしては手がはぇーじゃねぇか」
「移動兵器を使ったからな」
「あぁ、あれか。空が飛べるという乗り物か。そりゃはえーな」
「そんなに悠長にしてていいのか? 今日は偵察ということだから、俺だけだが明日になれば……」
「おい、ラヴィス。そんなにぺらぺらしゃべっちまってもいいのか? お前、あっち側の人間になってるんだろ?」
「あんな手際の悪い連中、誰が好んでつくかよ」
「ってことは?」
「中立だな。ムィと共に見学でもさせてもらうさ。ま、連中に感づかれない程度にお前を攻撃しには来るがな」
嬉しそうに笑うなよ……。
お前と戦やるときは真剣にやらないといくら命あったって足りねぇのに。
「そんなに嫌そうな顔すんなよ。とにかく、今日のミッションを果たすとするか」
ラヴィスはそう言い、不敵に笑った。
戻る | 進む | 目次
Copyright(c) 2008 all rights reserved.