Double Moon
03.ここが私の生きる場所

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「……で?」
 『ジュグ』って呼ばれている男の人が不機嫌そうにこっちを目だけで見る。
「だから、どうやって帰るかわからないから、しばらくこっちにいる」
「帰れ」
 まるで私が何を言おうとしていたのかわかっていたかのように、間髪いれずに言葉を挟んできた。
「ジュグっ!?」
「どうしてよ。私がここにいちゃいけない理由があるの?」
「お前はここの者じゃない。だから、帰れ」
 一方的過ぎる。
 ……ひどいなぁ、泣いちゃうぞ。
「じゃあ、帰り方を教えてよ」
 そう言うと、返す言葉が見つからないのか黙ったまま俯いた。
 だって、帰り方わかんなきゃ帰るに帰れないじゃない。
「ほら、ジュグの負け。じゃあ、改めて俺はラヴィス。ジュグの仕事のパートナーだ」
「仕事?」
「あぁ、今さっきアンタが入ってきたところの警備だ」
「あそこ、なにかあるの?」
「アンタみたいな異世界からの客の相手さ。まぁ、大概は精神だけが迷い込むんだが……アンタは珍しいな」
「そうなの?」
「ラヴィス、こいつ、一度精神で迷い込んできた」
「なっ!? 」
 ラヴィスさんが不思議そうにこっちを見つめる。
「そ、そんなこと言っても、わからないの! どうしてまたこっちに来れたのかもわからないんだもん」
 今度は二人そろって頭を抱えた。
 なんだか釈然としない。
「と、とにかくっ! 帰れるまで、こっちが私の生きる場所だからね!」


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