『ぜぇったい、また、来てやるんだからっ!』
彼女のそんな声がまだ耳に残っている。
来たっていいことなんてないのにな……。
そんなことを考え、まだグラスに残っているブランデーを一気に飲み下す。
「おい」
「あ? なんだ、ラヴィスじゃねぇか」
「なんだはねぇだろ」
「何のようだ?」
「お前、そんなに飲んで大丈夫なのか?」
「あ?」
気がつくと、ボトルを3本もあけていたようだ。
4本目へと動いていた手をラヴィスが払った。
「お前、まだ仕事中だろうが」
「お前の方はどうなんだ?」
「ちょい休憩」
ラヴィスはいたずら気に口元を釣り上げ、今俺の手を払いのけたボトルへと手を伸ばした。
「……なんだ、そりゃ」
「今、持ち場には?」
「さぁな。誰もいないんじゃないか?」
そう言葉を発した瞬間、頭が割れるような耳鳴りに襲われた。
「……ッ!」
「お、おい。どうした!?」
俺はうずくまりながら、耳鳴りが去るのを待った。
耳鳴りが去ったと思えば、あの少女の気配が……。
「ジュグッ!」
「ああ」
短く頷き合い、足元に転がっている麻袋を拾いながら俺たちは急いで現場に向かった。
現場に着くと、すでにあの少女は月から舞い降りた後だった。
今回は前回とは違い、精神だけでなく、肉体を伴っていた。
サイアクだ。
「来るなといったはずだが?」
そう少女に声をかける。
少女は閉じていたまぶたを重たそうに開け、目を見開き、そして、ゆっくりと、不敵に笑った。
「行ったでしょ? 絶対にまた来てやる、って」
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