エデンの園で会いましょう
14.Unemployed

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 最後まで見届けると言い張るフェルーナを後ろに従え、ロザンヌの部屋の扉を叩く。
 しばらく待ってみても返事が返ってこない。
(帰ってない、ってことはないわよね。寝てるのかしら……?)
 再び扉を叩く。
 フェルーナの顔が段々と心配そうに眉がよってきている。
 と、扉の向こう側からトタタと走る音が聞えてきた。
「はいはーい! そんなに何度も叩かなくったって聞こえて……って、ラティカ! 一体どうして戻ってきたのよ」
「夜遅くにごめんなさい。しばらくここに置いて欲しいの」
「そんなことよりも――」
 理由を言いなさい、と玄関で腕を組み、仁王立ちするロザンヌ。
「それは中に入ってからじゃ、だめ?」
 上目遣いで首をかしげる。
 途端に、ロザンヌは深く息を吐き、私の後ろに視線をやった。
「あ。フェルーナ、私はもう大丈夫。ケイシュ様によろしく伝えておいてね」
「わかりました。では、私はここで失礼します。ロザンヌ様、ラティカ様のこと、くれぐれもよろしくお願い致します」
 フェルーナはそれだけ言うと、馬車へと戻っていった。
「さあ、上がんなさいよ」
「ありがとう、ロザンヌ……」


 ロザンヌの愛好ティーを飲み、ひと息ついたところで切り出してきた。
「で? どうして戻ってきたの?」
「話せば長いのだけど……」
 そうして私は今までの経緯をなるべく詳しくロザンヌに伝えた。
「……あんのボンクラ貴族がッ! 自分のことしか考えない馬鹿だけど、切り札っていうのが気になるわね……」
「あの方、自分の価値を下げることに関しては容赦がないから、一体なにをやってくるのか怖くて……」
 ロザンヌはうーん、と唸り、一口ティーを口に含んだ。
「とりあえず、このボンクラを手出しできないようにしなきゃならないのよね。キャシーにでも頼もうかしら……」
「キャシー?」
「ああ、私の仕事仲間で情報だとか盗んでくるのがうまいのよ。ようするに、スパイね」
「あ、あんまり剣呑なことはしない方が……」
「なぁに言ってるのよ! ラティカの幸せがかかってるのよー? それに、キャシーも仕事として請け負っているから何も問題はないわ」
 そこまで言い切ると、ロザンヌは紙束を取り出し、何かを書き込んだ。
 それを数枚作ると、この話はおしまい、と手を叩いた。


 私の分の寝床を用意し、眠る準備万端のそのとき。
「それよりも、ケイシュ様からの告白、なんていただいたの?」
 先ほどとは違い、目をキラキラさせてロザンヌが詰め寄ってくる。
「え、あ、うー……」
 私は言葉にならない声をあげ、なんとか逃れようと枕で顔を隠す。
(そんな……口で説明なんてできるけないじゃない!)
「ほらほらぁ、さっさと吐いちゃった方が楽よー?」
「で、でも!」
 ロザンヌはなお、でも? と、詰め寄ってくる。
「ほ、ほら。ケイシュ様はそんなこと望んでないかも、しれない……じゃない?」
「でも、あの執事は書いてるとこから見てたんでしょ? なら、問題ないない。それに、直接読むんじゃなくて、ラティカから聞くわけだしー。ね、全然問題ない」
 逃げ道を完全に塞がれ、おろおろしていても、ロザンヌは手を差し伸べてはくれなかった。
「……えと、ね。全部は覚えてない、んだけどね」
(ほんとは、全部覚えてるんだけど、ね)
「はいはい」
 照れるから、枕を抱きしめ、ぼそぼそと話した。
 そんな私をロザンヌは嬉しそうな顔をして、静かに聴いてくれた。


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