包丁片手にたまねぎと格闘すること5分。目の前がぼやけて大変なことになって早3分。これだから、たまねぎってキライ。でも、悟のためだもん――なんて、自分に言い聞かせてる。
材料が切れて、使う調味料を戸棚から出す。悟自身が料理をするからなのか、悟の家は結構そろっている。
今、私が作ろうとしているものは八宝菜。
片栗粉、鶏がらスープの素、塩コショウ……キッチンへと並べていく。
「うー……っ、まだ前見えないーっ」
目頭がカッと痛くなり、とても目を開けていられない。
「きゃーっ、いたいぃー!!」
悟が私の悲鳴(?)を聴きつけ、キッチンへと顔を出す。
「おいっ……望、大丈夫か?」
「悟は向こうで待っててぇーっ!」
タオルで目を押さえながら叫ぶ。悟はしぶしぶといった様子で戻っていく。
「ぐぅー、ちくしょー。こんのたまねぎめ……」
なんて悪態をつきながらも、着々と仕上げていった。
「はい、お待たせー」
トン、と悟の前にできたてほかほかの八宝菜を置く。
「お、今度は上手く作れたな」
「なによそれー」
「いや、ほめてんだよ。それより、ほら」
悟は隣に座ろうとした私の手を引き寄せ、自分の膝の間へと。
「……悟?」
「ん?」
「食べにくくない?」
「いや……まぁ、多少はな。でも、こんなのもいいだろ?」
ぎゅっ、と後ろから抱きしめられる。
あぁ、すっごい幸せー……。
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