「気にしてないよ」
気持ちを隠して紡ぐ言葉。
「……ウソつけ」
悟はため息をつき、タバコに火をつける。
今、私は悟の家に遊びに来てる。ことの発端は、さっき悟の家に大学のトモダチが遊びに来たこと。しかも、女の。
悟はただのトモダチだって言い張ってるけど、相手のしゃべり方、仕草から通常のおトモダチとは到底考えられなかった。
「何度も言ってるだろ? あいつはゼミの只の友達だって」
「だから、気にしてないってば……」
何度も訂正するもんだから、余計に心配になる。あぁ、なんだか涙出てきそう……
「気にしてないなら、こっち向けって」
悟にそう言われてちょっとびっくりした。
「望のクセくらい、見破ってるぞ。意地張ってないで、こっちおいで」
何か許せないことがあるとそっぽ向いちゃう、私のクセ。
「知……ってたの?」
思わず反対を見ていた体勢を向きかえる。
「あぁ、一体何年の付き合いだと思ってんだよ」
うぅ、嬉しくて泣きたいよ。
「じゃあ、只のおトモダチっていうのは本当?」
「言ってるだろ?」
「昔のイイ仲だったりとかじゃない?」
「違う。まぁ、気は合ってたけどな。でも、俺は友達としか思ってない」
悟は目を見て言ってくれる。
「ホント……?」
「あぁ、望がいればそれでいい」
今は、なんだかこれだけで十分みたい。
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