めっちゃ好きやねん

ものかき交流同盟恋花祭り2007参加作品

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 今日は花の金曜日。明日明後日の土曜日曜と遠距離恋愛中の彼氏――成治がこっちで過ごすために来る予定やねん。
 成治は関東、あたしは関西。まとまった休みやないと、ゆっくりと会えへん距離におる。そういう事情から、あたしたちは一ヶ月仕事を頑張って月一でゆっくり会える時間を取るようにしてるんやけど。
『ごめんっ!』
 電話から聞こえてきた言葉は三ヶ月お預けの通告。先月先々月と上手い具合に仕事を増やされ、こっちに来られへんかった成治。もうこれで三回目。
「……仕事なんやろ?」
 二ヶ月ぶりに会えるとおもてたから、その落胆は大きかった。それは勿論、声にも表れた。いつもならもうちょい声のトーンは高いんやけど、今はもう普通に喋ってるときの声よりも低い。
 しゃあないやん。
「よかったやん。昇進、近いんちゃうん?」
『涼、それ本気で思ってる?』
 成治の声のトーンが低くなる。
 成治、怒ってる……。
 それでもあたしは引かれへんかった。
「おもてるよ。よかったやん?」
『俺たち、三ヶ月も会えてないんだぞ!?』
 電話口越しに怒鳴られる。
「わかってるよッ! だって、しゃあないやん! 仕事やんかッ」
 びっくりしたんと、成治の声が引き金になってあたしも声を荒げてしまった。今これ以上話してても、平行線になるのはなんとなくわかった。それに、このままの調子で喋ってたら、ヤバい。
「もうええやん、来られへんのやろ? 仕事頑張ってな」
『ちょっ、涼!?』
 耳から離した電話口からそんな成治の声が漏れてる。でも、あたしはお構いなしに通話を切った。
「会えへんくて、かなしくないとでもおもてんのかな……」
 一つのため息と共に漏れたあたしの声。ちょっぴり涙声なんは、今泣きそうやから。
 そして、再び鳴り出す携帯電話。勿論着信元は成治。いつものあたしなら飛びついて出てるけど、今のあたしは出られへん。しばらく鳴り響く携帯電話を見つめていると、留守番電話サービスに繋がれた。微量やけれど、留守番電話に入れている成治の声が漏れてくる。
 その声を聴こうと、あたしは慌てて耳元に携帯電話をあてた。
『涼……やっぱり出てくれない、か。涼は自分の気持ちを自分の中で溜めて整理しようとするから……もし、今泣いてるのであれば電話下さい』
「ふ、泣いてなんか、いいひんわ」
 そう返しながらも頬を伝う雫。あたしは頬についた雫の跡を拭い、携帯電話を操作し、着信履歴から成治に電話を掛けた。電話はワンコールも鳴り終わらない内に繋がった。
「も、もしもし?」
『ああ、よかった。繋がった』
 電話口から成治の安堵した声が聞こえてくる。
「なに?」
『涼の今の正直な気持ち、聞かせて欲しいんだ。俺、ちゃんと言ってくれないとわからないから』
 成治のあたしを甘えさせてくれるときの優しい声が聞こえる。あたしはそれに釣られたんか、素直な気持ちを吐き出そうとしてた。
「あいたい……成治と、あいたいッ」
 気持ちを吐き出した瞬間、涙が溢れてきた。あたしの本当の気持ち。涙と共に成治へと届いたみたい。
 電話口から泣いているのもわかったんやろう。成治は何も言わんと、あたしが落ち着くまで待っててくれた。
『うん、わかった』
 ふう、とあたしがひとつ呼吸を整えた後、成治はそう答えた。
「せ、いじ?」
『また明日、な?』
「……う、うん! また、明日。なぁ、成治」
『ん?』
「めっちゃ好き」
『うん、俺も。めっちゃ好き』
 あたしたちは笑い合った。
 こうしてずっと笑い合っていきたいわ。な、成治?


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