露の誕生の輝き

ものかき交流同盟賀正祭2007参加作品

目次


 新しい時間が今、始まろうとしている。
 夜露が葉を伝って零れ、泉へと舞い落ちる。その雫を寸前で花びらで掬ってやると、雫は七色に輝き始める。
 私たちの種族に新たな妹が誕生した瞬間だ。
 七色に輝く雫を零さぬよう、私は里へと走る。
 ほっそりとしなやかな手足は俊敏な動きを生み、細長く尖った耳は木々たちの声を聞く。褐色の肌を持ち、樹の皮で編んだドレスに身を包んでいる。そして、流れるように伸びた髪の毛は、光を受けてさまざまな色へと変化する。それが私たちだ。
 戻ると、雪に覆われていた里はすでにその跡影も無く、彩り豊かな花たちが新たな妹の誕生を祝福していた。
 今始まる、新たな時間。
 新たな妹はまだ産まれたばかりだけれども、彼女だけの新たな歴史は既に動き始めている。
 新たな時間の始まりに、祝福を。


目次

Copyright(c) 2008 all rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-