素直じゃない思い


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イラスト*ほづみ葉月さま(右少女と背景)・ゆきさま(左少女)
文章*RYTRさま(地の文章)・ゆう(セリフと一部地の文章)


 ずっと昔からここにいた気がする。
 ずっと前からこの距離で過ごしてきた気がする。
 だから、これからもここにいるのだろう。
 だから、これからもこの距離で過ごしていけるのだと思っていた。


 それは本当に些細な行き違い。
 それは本当に些細な想いのズレ、そこから生まれる憤り、憤慨、公憤、ただの反感。
 その全てはただの勘違いだってわかってる。もう、わかってるんだけど――


 いつもは、あんなに近くに感じるはずなのに、今はこんなに遠くに思える。
 いつもは、あんなに何でも言えるのに、今はこんなに口から言葉を紡げない。
 本当に大事な言葉は、今言うべきことのはずなのに。
 大切だと思うからこそ簡単には出てこない。大切だと思うのに……言えない。


 ◇◇◇


 あきほは泣きはらした目元を赤く染め、目元同様に赤く染まった鼻をすすった。
 きよかもあきほ同様に目元と鼻を真っ赤に染め、右手に持った三つ葉のクローバーを睨みつけていた。
「バカじゃない?」
「……うん」
「自覚、してんだ」
「…………うん」
「何、泣いてんのよ」
「きよかだって、泣いてるじゃない」
「……、うるさいわね」
「ふふ」
「……何笑ってんのよ」
「こうして、ふたりで話すの、久しぶりだなぁって思って」
「そ、うだね」


 どうしたいのかはわかってる。
 そのためにどうしたらいいのかもわかってる。
 でも、そうするきっかけだけが……なかっただけ――。
 たくさんの気持ちが入り混じり、いろんな想いが交錯して気が付くと全てがグチャグチャになってしまっていた。
 それでも願いはたったひとつ。2人の願いは同じもの、同じこと。
 その視線が交わることはまだ無いけれど、想いが交わり願いは重なる。


「それ……」
「ん?」
「そのヘアピン、まだ持ってたんだ……」
「……うん。きよかがくれたものだし」
 そう言って、あきほは少し顔を赤らめて、そっと前髪を持ち上げているヘアピンに手を添える。きよかが、このヘアピンのことを覚えていてくれたことの方にむしろ驚いてしまった。
(人のこと、言えないじゃない…)
「ヘアピンなんて、いくつも持ってるじゃない」
「でも! それでも……これがきよかとの思い出、一番詰まってる、から」
「……そう」
 2人の間に沈黙が流れる。でも、さっきまでとは違う沈黙。空気の重さがハッキリと違った。たしかに2人の周りを取り巻く空気は軽くなる。
 それは気持ちの重さなのだろうか。
 それは想いの違いなのだろう。
 決して居心地が悪いわけじゃない。
 むしろ、ふわふわと浮かんでいるような、そんな感覚。


「いつの間にこんなになっちゃったんだろうね」
「さぁ、ね」
「昔はよくさ、ふたり遊んだよね」
「毎日のようにね」
「クローバーの花冠もよく作ったよね」
「そう――ね」
「あの公園、まだ残ってるかな」
「……行ってみる?」
「うんッ!」


 ◇◇◇


 痛いは痛い。
 痛い時はツライ。


 それでも、――私たちの住んでいる世界は最高だ。


 すきすきだいすき、あいしてる。


<<あふれた思い>>
飛び入り参加した絵チャでコラボも飛び入り参加してきましたー!
「あきほは泣きはらした目元を赤く染め、目元同様に赤く染まった鼻をすすった。きよかもあきほ同様に目元と鼻を真っ赤に染め、右手に持った三つ葉のクローバーを睨みつけていた。」の部分だけ恐れ多くも私の地の文章を使ってくださってます。
後から読み直してみると、ちょっと「……」を多様しすぎたかな、と反省orz
沈黙って表しにくいよねーっとまさに言い訳ですね、ハイ;
お三方、コラボレーションありがとうございました!
また機会があれば是非とも!!
(2008/1/17)

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