ちょっとはオレのこと気にしてくださいよ

収録:2009/12/31

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 次から次へと途絶えない確認の電話の嵐に次第と耳が痛くなってくる。
 ようやく終わったかと思えば、その次には部長からの呼び出し。
 耳だけでなく、頭までも痛くなってきて、机に戻ってきて最初にしたことは突っ伏したことだった。
「センパイ、大丈夫っスか?」
 伺いがちに声をかけてきたのは向かいの席にいる後輩だった。
「……大丈夫よ。ちょっと休めれば楽になるから」
 そう言った矢先に同僚から声がかかる。やれやれと立ち上がり、同僚のもとへと急ぐ。

 その後も会議が入っていたり企画のすり合せがあったりと慌しい時間が続き、ろくに休めないまま終業時間を迎えた。
「やっと六時……」
 椅子の背もたれにこれでもかともたれ込み、深く息を吐く。
「お疲れ様っス!」
 向かいの席からさらに脱力したくなるような明るい声が響いた。
「お疲れ……。ずいぶん元気ね」
「ハイ! ……あの、矢村さん」
「なぁに?」
 返事をしながら私も帰り支度を始めるべく、机の上の資料を整頓し始めた。
「これから飲み行きません?」
「これからー? ちょっと今日は疲れたからパスしたいなぁ」
 思ったままをそのまま口にすると、なぜか後輩は肩をがっくりと落としていた。
「そ、そうですか……」
 その落胆具合があまりにも見事で思わず噴出してしまった。
「ど……どうして笑うんですか!?」
「ゴメンゴメンっ。あまりにもわかりやす過ぎて……ふふ。じゃあ、今やってる企画が終わったら打ち上げがてらにみんなで飲みに行こうか!」
「……はい」
 返事をした後輩はなぜか先ほど同様に肩を落としていた。

(……飲みに行きたいんじゃないの?)


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